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1.

学位論文

学位
曽根, 正輔
出版情報: 曽根正輔
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000222/
概要: 航空輸送は現代社会を支える重要な要素であり、それを支える空港建設は巨大な公共資本投下である。これを適切に行うためには、需要予測に基づく政策決定が不可欠であるが、日本の空港整備では問題が指摘されている。北九州市は2006 年3 月、新北九州空 港の開港により待望の本格的空港を都市基盤の一つとして獲得するが、その活用を通じ、更なる北九州市の発展を図る為の都市政策を策定し、かつ北部九州の空港能力問題改善に貢献していくためには空港利用の予測とその正しい解釈、適切な政策化が必要である。新空港は北九州市の航空事情を一変させるに留まらず、北部九州に日本では例外的な空港選択状況を現出させる。特に、経済情勢の変化から航空需要が必ずしも単調増加ではなくなった現在、増加の予測に留まらず旅客の選択について正しく予測する事が今後の空港政策策定の上で重要である。本研究では既往研究の検討と現在までに公表された諸予測の問題点をそれぞれの予測モデルと使われたデータに立ち帰り明らかにし、次に問題の解決の方向としての集計ロジットモデルの合理的な適用への基礎検討として、わが国における航空と新幹線の選択状況を集計ロジットモデルで解析した。次に空港選択を大きく左右する空港アクセス条件の影響を北九州都市圏の特性を併せ、非集計ロジットモデルにより解析した。また、2000 年に北部九州の空港能力問題に対し、福岡空港を中心にした需要予測に関する研究が発表されており、予測手法として集計ロジットモデルが提案されていることから、詳細な検証を行った。更に空港に関する旅客の選好要因を、既存の交通統計データの限界を超えて解析するため、消費者性向の解析に使われるコンジョイント分析手法を空港選好要因調査に適用した調査を行った。本研究で取り上げたモデルはいずれもロジットモデルを基礎として旅客の選択を解析し、結果として選択要因である旅行の所要時間、総費用などの要因に関する旅客の定量的な反応を表すパラメータを得るが、各々の解析からのパラメータ間には互いに斉合性が見られ、旅客は合理的な基準によって選択を行っていることが示された。この事実は本論文の主題である、旅客の空港選択の定量的な解析が空港の有効活用に向けての都市政策に有効であることを示す。これらの結果から現在、北九州都市圏では福岡空港へのアクセスにかなりの割合で新幹線が使われる地域がある反面、自家用車が最も有利な手段として主に使われる地域も存在するなどの現状が定量的に把握され、都市圏が広範囲に広がる北九州市では新空港に対する活用促進の都市政策は地域による調整が必要である事が示された。また北部九州の航空事情については福岡空港の能力問題があり、一部で利用者の意識構造データによる空港選択モデルなどから、福岡空港を中心とした利用者の動きを恒常的とする主張がされ、これを福岡市の都市構造問題と絡めた新福岡空港構想が提出された。しかし過去に行われた福岡空港についての需要予測は航空事情の変化により、現状から既に乖離しており、空港利用者は条件の変化に対応して選択している事を示した。また本論文での解析から利用者は合理的に選択をしている事から、航空利用者は新北九州空港に対しても実現する利便性を正しく評価・選択することが予測された。本論文では解析方法の比較検討及び独自に行った各種の解析から空港選択予測のあり方として、情報公開と解析の再現性の面から、集計ロジットモデルを適切に用いる方向を推奨すると共に、現状の交通統計データによる非集計ロジットモデルの限界を示した。また、空港利用者の空港選択要因を見出し、定量的な比較検討を可能とする手段としてChoice-Based Conjoint 解析が有効である事を示した。以上の結論から、北部九州に関する空港政策として、空港事情に大きな影響を与える新北九州空港開港の結果生まれる北部九州の空港利用状況を正しく予測し、適切な空港間の機能分担を実現する都市政策を採るためには、適切な選択行動の解析と理解が不可欠であり、これらをもとに中期的計画が策定され、直ちに実行されなければならない。中期計画は直面する問題を部分的ながら解決し、長期計画の前提となるべきものであり、本論文では、その策定への具体的な手順と内容を示すとともに現在の空港政策の検討は長期に偏り、中期的視野に欠けている事を指摘した。 続きを見る
2.

学位論文

学位
八束, 裕
出版情報: 八束裕
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000223/
概要: 既往研究の検討と現在までに公表された諸予測の問題点をそれぞれの予測モデルと使われたデータに立ち帰り明らかにし、問題の解決の方向としての ロジットモデルの合理的な適用への基礎検討として、我が国における航空と新幹線の選択状況を集計ロジットモデル で解析した。 続きを見る
3.

学位論文

学位
藤本, 宗一
出版情報: 藤本宗一
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000224/
概要: ここでの文脈では、生産者とおなじように消費者についても「1999 年の卸売市場法改正」の影響について定量的に検証すべきである。この場合、消費者に注目すべきで、それは都市生活者を意味する。したがって、経済的な観点からは、一定量の流通規模がつね に必要となる。今日的な日本の漁業組織は、95%を占める家族規模的な経営体と約5%の中小規模漁業会社からなつている。しかし、都市の需要を満たすような水産物の総計の約70%は、後者から得られている。これらのことから判断して、この論文では「中小規模漁業会社が生鮮水産物の中心的な供給者として重要な役割を果し、おなじように都市居住者が生鮮水産物の主要な需要者としての役割を果す」という基本的な視点に立っている。卸売市場の基本的な機能は小売店のための仕入れ機会提供だけでなく、生産者への販売機会提供にもある。公的機関による生鮮食品流通の起源は、供給予測の不可能性と商品の腐敗特性に起因している。果物や野菜などの農産物を取ってみると、計画的な栽培が可能で、卸売市場は消費者の側(都市地域)だけに存在する。一方、水産物が同様に関係する卸売市場では、消費者の側だけではなく生産者の側(水揚される地区)にとっても必要となり、これを「二段階制度流通」と呼ぶことにする。水産物の場合、気象条件におおきく影響され、日ごとの漁獲成果も異なるというのが主な理由で、結果的に漁業供給の内容を予測することが非常に難しい。そのために、供給不規則状態にある生産者の側の卸売市場の調整機能にも注目しなければならない。すなわち、この機能とは、供給状況に連動しながら展開される用途に応じた水産物の分配のことである。一方の消費者の側にある卸売市場は、都市居住者への生鮮水産物の安定供給を機能とするべきである。それは、卸売人を2 社で競争させる複占状態で得られると考えられてきた。なぜなら、生産者の側から荷物を集めるのは卸売人の役目だからである。この競争ルールのひとつが、出荷者を平等に扱うための販売委託による集荷であり、他のひとつが公開されたセリによる取引である。消費者の側にある卸売市場は、生産物の効率的な現金化と生鮮水産品の安定的な供給という意味で責任は重い。しかし、1999 年の法改正で、取引の原則としていたルールに関する一部が規制緩和された。それは、セリによる取引に対しては個別的な相対取引を認め、委託による集荷だけではなく買取による集荷をも容認するというものであった。果たして、この規制緩和は誰にとって有利に作用したのか、その点を精査しなければならない。なぜならば、この改正を突き動かしたのは大規模小売店の功利的な企業戦略であるかもしれないからである。消費者にとって、公開されたセリ取引でない個別的な相対取引の商品が、品質審査を厳格に受けているとは考えられない。消費者は食物獲得を小売店に依存しているのが現実である。だからこそ、生産と消費を結ぶ流通は、消費者に対して商品の品質に責任を持たなければならない。さらに、買取による集荷は、生産者の側の特定の業者からの収集となる。したがって、生産者の側の卸売市場での価格競争を不活発にするから、結果的に生産者は不利益を受ける。わが国の中小規模漁業会社は魚価安を嘆き、消費者は魚価高を嘆いている。この論文に示された理論的な枠組は、いくつかの重要な政策的含意について詳細に示唆することができると考えている。 続きを見る
4.

学位論文

学位
正岡, 利朗
出版情報: 正岡利朗
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000225/
概要: 本論文では、人口減少時代における人々の新たな居住スタイルとしての「複数居住」に注目し、この基礎概念を明らかにする。そして、このような居住スタイルの促進が、地域の人口減少対策として有効であるとの認識のもとで、その促進策について検討するものであ る。ここで複数居住とは、「主たる住宅を持つ住民が、従たる住宅を確保し、それら間を反復移動することにより、総合的に、より高次の欲求を満足させる居住スタイル」であると考える。それでは、なぜ複数居住を考えるのか。その発想は、きわめて単純である。筆者は、地域間人口移動についての調査研究にこれまで携わってきたが、生産年齢人口では、職業を求めての移動が移動要因の多くを占めていたという事実が指摘できる。このことは、とくに、「地方圏⇒大都市圏」の移動パターンで顕著である。職業による所得の獲得の機会が豊富な「都市」には人口が流入し、乏しい「多自然居住地域」からは人口が流出したのである。もとより、多自然居住地域におけるこのような条件は、容易に解消されないであろう。したがって、この地域に人口が増加する可能性は、職業によらない移動要因による移動者にかかっている。そして、近年、一部の都市住民により、多自然居住地域の自然環境の良さ等の評価が高まりつつある。そこで、人口誘致策として考えられるのは、まず第一に、「定年退職者による移住」であろう。この点については、すでに全国の多くの地方自治体等で「団塊世代誘致策」が採られていることからも、容易に首肯されよう。しかし、より若い世代の人口が増加する可能性はないか。このような状況のもとで、とくに複数居住の考え方が注目されたのであった。このスタイルであれば、都市住民が、主たる職業については都市で継続させながらも、一定期間、多自然居住地域で居住することが可能となるからである。そして、多自然居住地域では、このような複数居住の実践者を受け入れることができる空き家が数多くあるし、また、複数居住であれば、受け入れ地域側の行政コストも、限りなく小さくすることができるであろう。ただし、現時点では、多自然居住地域の多くの地方自治体において、複数居住施策がそれほど熱心に取り組まれているようには思われない。しかし、複数居住施策を推進することは、多自然居住地域にとって、有効な人口減少対策として位置づけられるのではないか。そこで、これらのことを明らかにするべく、複数居住の研究を開始した。また、その研究を通じて明らかにしようとした各テーマ及びその概要は、以下のとおりである。最初に、序章において、本論文の問題意識及び構成を整理した。「第1部 基礎概念」では、まず、第1章において、複数居住の歴史や現状について整理した。複数居住は、現在、実践者の増加を背景に、多自然居住地域の人口減少に対する対策として、政府等による調査研究を経て法制化される段階である。次に、第2章において、既存のアンケート調査を用いて複数居住の希望者や実践者の意識等を整理した。その結果、都市住民の中に複数居住の希望者が多数いることが判明し、彼らに適切な促進施策を施すことが肝要であることを指摘した。そして、第3章において、受け入れ地域である地方自治体等はどのような意識であるのかについて整理した。その結果、政府は促進に向けての準備を整えつつあるが、地方自治体の反応は総じて鈍いことが明らかとなった。「第2部 分析方法」では、まず、第4章において、複数居住の開始から、その継続、そして終了に至るまでの過程について、モデル分析を行った。その結果、複数居住促進についてのさまざまな局面が明確になった。次に、第5章において、複数居住が、実践者及び受け入れ地域にどのようなインパクトを与えるのかについて、理論的な考察を行った。合わせて、インパクトについての既存の調査研究を整理した。そして、第6章において、第4章、第5章の結果を踏まえ、今後の複数居住についての検討事項を明らかにした。「第3部 実証分析」では、まず、第7章において、複数居住を促進するためには、とくに「従たる住宅」についてどのような課題があるのかについて考察した。その結果、多自然居住地域には、未利用の空き家が多数あり、これを活用するべきこと、住宅の取得には、地方自治体等の関与についての課題があること、維持コストを低減させるためには、リバースモーゲージの適用が考えられること、処分については、その容易性を担保する仕組みが必要なこと等を明らかにした。次に、第8章において、複数居住を促進するためには、とくに「反復移動」についてどのような課題があるのかについて考察した。具体的には、高速道路を利用して、主たる住宅と従たる住宅との間の反復移動は容易になり、さらに割引制度も導入されたが、よりいっそう費用負担を軽減するべきであることを明らかにした。そして、第9章において、複数居住が、今後、大規模に実現可能であるのかどうかについて考察し、多くの地方圏において実現可能となるためには、大都市圏の都市住民を対象とするのみならず、地方都市の住民にも拡張するように、施策の発想を転換するべきであると指摘した。そして最後に、終章において、本論文で得られた知見を整理した。 続きを見る
5.

学位論文

学位
吉村, 英俊
出版情報: 吉村英俊
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000228/
概要: グローバル化と地方分権化が同時に進展する中にあって、地域経済が今後とも持続的に発展していくためには、地域特性を踏まえ、かつ地域資源を活かした内発的発展が必要であり、とくに産業経済の分野においては、地域イノベーションを促進することが望まれる。 それでは、どのようにしたら地域イノベーションが促進されるのか。これまで各地域で展開されてきた産業支援機関の整備や支援制度の充実はほぼやり尽くされた感がり、今一度原点に戻って、その構造解明を図り、方策を講じる必要があるのではなかろうか。また、北部九州地域には拠点となる都市が散在し、それぞれが県域等の中心になって地域の発展をリードしている。それでは、これらの都市が特徴を活かして連携し、北部九州地域として総合力を発揮することができるならば、地域が有する潜在力を顕在化し、国内においては第4の経済圏として、また海外においても、とくに環黄海経済圏においてリーダーシップを発揮することができるのではなかろうか。第一章では、地域産業・科学技術政策の変遷を整理することにより、地域がこれから講ずべき方向性が、地域特性を踏まえ、かつ地域資源を活かした内発的発展であることを確認した。また、地域産業・科学技術政策の事例として、北九州市の産業再生に向けた20年間に亘る取り組みを紹介した。第二章では、九州地域のイノベーションの現状を、産業経済、産学連携とベンチャー、各県及び政令指定都市のイノベーション政策の視点から把握した。その結果、九州地域は商工業はもとより、農林水産業や観光などにおいても盛況であり、さらに成長著しい東アジアに近いなど、高い成長の可能性(潜在力)を秘めていること、また、当地域は産学連携やベンチャーにおいても、国及び地方自治体、大学等の努力により、関東・近畿・中部に次ぐ活気ある状況にあることが分かった。第三章では、まず、第一・二章の検討を踏まえ、本研究の問題意識として、地域イノベーションを促進させるためには、その構造を解明すること、また、地域として総合力を発揮することが必要であることを言及した。次に、既往研究のレビューを産業クラスター、都市の住みよさ、創造都市の視点から行い、その結果、直接的要素だけでなく間接的要素からも検討すること、定量的なアプローチを採用すること、都市単体の検討に止まらず広域で地域を捉えることなどの示唆を得た。第四章では、北部九州地域の拠点都市とクラスター先進都市を対象に、直接的要素と間接的要素について指標化し、まず、地域イノベーションの構成要素を主成分分析によって明らかにし、次に、地域イノベーションに影響を与える要因を重回帰分析によって算出した。その結果、地域イノベーションの構成要素は、「都市機能の集積度」「工業の集積度」「地元自治体の積極性」「インフラの整備水準」「生活の安全・安心・快適度」「都市の魅力度・多様性」の6つに集約され、要因は第一位が「都市の魅力度・多様性(都市機能の集積度)」、第二位が「工業の集積度」であることが分かった。第五・六章では、第四章で明らかになった地域イノベーションの構成要素について、「企業」及び「人」の視点から考察を行った。まず、第五章では、イノベーションの主体である「企業」の視点から、企業が新規事業をはじめるとき、都市に対して、どのような機能や特性を期待するのか、また、どのようなタイプの都市を選択するのか、AHP(Analytic Hierarchy Process)を用いて調査分析を行った。その結果、「企業集積」や「研究基盤」「行政支援」といった直接的機能を、「都市基盤」や「都市の多様性」といった間接的機能よりも重視すること、ただし、その志向程度は業種によって差異があることが分かった。次に、第六章では、イノベーションを担う「人」の視点から、住みたくなる都市とは、どのような機能や特性を有した都市なのか、コンジョイント分析を用いて調査分析を行った。また、働き方とライフスタイルについて、数量化Ⅲ類を用いて調査分析を行い、さらに、住みたくなる都市として評価の高いオーストラリアのメルボルン、アデレードを視察した。その結果、「安全・安心・住宅」や「教育」「行政支援」といった堅実に生活が営める機能・特性を、「都市の活気」や「魅力ある企業集積」「娯楽」といった活動的な特性よりも重視することが分かった。以上の結果より、企業は、そのタイプによって志向が多少異なるものの、総じて「工業集積を有した大都市」であることを期待する。しかし一方、イノベーションを担う人は、安全や安心、豊かな教育環境を志向するなど、都市の活気とは裏腹に「堅実に生活できる環境」を期待としており、都市には「動と静」の二つの側面(二面性)が必要であることが分かった。第七章では、都市間連携について検討を行った。まず、第四~六章の調査分析結果を総括した上で、3つの都市グループについて、都市政策の方向性を示唆し、その結果、都市単体での充実強化の限界と、都市間連携(補完)の必要性について言及した。次に、連携と差別化の視点から地域形成の考え方を提案し、連携の事例として、自動車関連産業を紹介した。最後に、第八章において、北部九州地域としての総合力形成について、当地域が東海地方や環黄海地域と比較において、孫色のない十分な規模とバランスを有していること、そして、そのためには、福岡市と北九州市が連携し、核を形成しなければならないことを言及した。また、実現に向けた推進のあり方を、昨今の道州制の議論を踏まえて示唆した。 続きを見る
6.

学位論文

学位
重田, 康博
出版情報: 重田康博
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000226/
概要: 本研究論文は「国際協力NGO」活動の変遷を論じたものである。従来、開発途上国の発展に寄与してきたNGO活動への評価は国際的に高く、その研究は「NGO活動の発展」という肯定的視点から紹介されてきた。本研究は、そこに留まらず、逆に、発展の過程で 生じた発展の阻害要因を明らかにしようとしたものである。 続きを見る
7.

学位論文

学位
東, 義真
出版情報: 東義真
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000227/
概要: 本論文は、米国人映画作家ジョージ・ルーカス氏が原作、脚本、及び監督し制作した映画『スター・ウォーズ』(Star Wars)について、多角的なコンテクストで捉え、ルーカス監督の思想的局面に迫るものである。映画史における『スター・ウォーズ』の立 ち位置を確認していく。そして特殊撮影技術(visual effects)による前人未到の世界観創造が縁の下の力持ちとなり、リアリティを持って表現される叙事詩テーマを解明する。そこには神話的伝統というコンテクストが意図的に盛り込まれていることを発見する。1980 年代という時代性の中で、アメリカ文化と日本・東洋文化(仏教や道教などを含む)とが合流するウエストコーストが生み出したカルチャーとしての『スター・ウォーズ』の世界的影響力というコンテクストを見る。さらに、20 世紀末の多元文化主義の勃興というグローバル・ムーブメントの中に於ける『スター・ウォーズ』の求心力を確認し、1960年代~1970年代の米国の政治的イベントとベトナム戦争の経緯から生じる社会変革の中で、表現者としてのルーカス監督の 思想がどのように時代への答えを出してゆくのか、を再確認し、『スター・ウォーズ』シリーズによってルーカス示すメッセージを、文化的融合の促進として捉 える。映画史のコンテクストとしては、初期ハリウッドのスタジオ確立そして弱体化という変遷から独立系の映画作家たちが登場し、ルーカスフィルム社も又その中から登場してきた事と、ルーカス映画の系譜を検証する。 ジョージ・ルーカスの制作する映画の特徴を、西部劇スタイルから登場する孤独なヒーロー像や、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(2001: A Space Odyssey)に始まる現代SF 空想科学映画テーマと関連付けて述べる。アメリカ文化と東洋・日本文化のコンテクストを考えた時の『スター・ウォーズ』は、アメリカにおける超絶主義(Transcendentalism)の代表者の一人であるラルフ・ウォルド・エマソンが東洋思想的観点を主張したことと、自然と一体になるフォースの思想との関連性を軸に検証することができる。また『スター・ウォーズ』にはビジュアル面でも多くの東洋デザインが取り入れられていてルーカスの東洋思想への傾倒を補強している。こうした観点から映画を 検証していく。さらに、ルーカス監督自身の伝記と彼の映画作品との関連性から、作家のパーソナリティに迫り、作家ジョージ・ルーカスのライフワークとして位置づけられる2大シリーズ『スター・ウォーズ』と『インディ・ ジョーンズ』の中に見られる神話学・人類学の要素を、比較神話学者ジョゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)の神話的伝統(神話的雛形と汎神論的な考え)と関連付けて述べる。本論文は、ヒューマノイド型生物や、異星人、または高度に発達したロボットが、様々な文化・習慣を持つ銀河世界で活躍するという映画を表現し、そこに多文明 共存の豊かな形を提示し、この世界を多元文化的に捉えることを肯定するジョージ・ルーカス氏が、映画芸術の中で象徴的な形として、複雑な文化的遺産と苦闘しながらも新しい形の共存社会の提示を決意したということを証明しようとしている。第1章では、序章として本論文の中心的テーマである『スター・ウォーズ』に伝統的神話が意図的に含められて制作された経緯を見る。ここでルーカスが未来の世代を荷う子供たちのために、映画『スター・ウォーズ』制作を決意したことを示す。第2章では、『スター・ウォーズ』が登場するまでのアメリカ映画史とアメリカン・ヒーロー像を検証し、ルーカス監督の人物像や育ちの背景の詳細と、『スター・ウォーズ』に描かれる東洋思想がさらに続編映画によって深いものとなっていき、単なる映画を超えて文化的現象となる時代とを関連付けて考える。第3章では、『スター・ウォーズ』にあるアメリカ文学的背景としての父を探す物語の部分を検証する。そして、サーガとして見たときに、この大河絵巻が改心の 物語をテーマにしているというヨーロッパ文学のコンテクスト上にあることを示す。同時に、その枠組を超えて汎神論的な多元文化主義を強く打ち出しグローバルな表現としてメッセージを提示していることを確認する。そのために、思想的に一貫している他のルーカス映画も検証する。第4章では、『スター・ウォーズ』の中に含まれた他の神話的雛形の抽出を、ジョゼフ・キャンベルの捉え方の中で検証する。ルーカスのキャンベルへの傾倒が、ルーカス自身の作風を汎神論的に、より多様で深いものとしたことを考察する。そして、ルーカスが次第に文化人類学的理解を深め文化多元主義を持論とし、多くの人類集団(人類学では人種という言葉を使用しない方向にある)共存の映像的メッセージを確立した、と結ぶ。 続きを見る
8.

学位論文

学位
阪井, 俊文
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000229/
概要: 当論文は、雑誌の内容分析を通じて、現代における恋愛の特徴を、「消費社会化」「ジェンダー」「社会階層」を切り口にしつつ解明することを目的としたものである。
9.

学位論文

学位
秦, 兵
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000283/
概要: 本研究では、産業3分類(1次・2次・3次産業)と工業を中心として、中国及び中国各地域における1人当たりGDP及び産業構造を分析し、産業構造類型(産業構造の特化の違いに基づいて産業構造をパターン化すること)の観点から中国及び中国各地域の1人当 たりGDPと産業構造の傾向性・特徴を実証的に解明し、あわせて中国及び中国各地域の経済発展及び産業政策の問題点・課題・展望を示すことを目的とする。 続きを見る
10.

学位論文

学位
Xue PENG
URL: http://id.nii.ac.jp/1077/00000230/
概要: 本研究は、創造的発展戦略の不可欠な要素である海外経験の豊富な海外在住の中国人材を呼び寄せるためにはどのような方策が求められるのか、また、そのような人材はどのようにして帰国地を選択するのかを数量的に分析しようとする意欲的な研究である。