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わが国の中小規模漁業会社(中小資本漁業)の生産物を対象とした生産と流通の研究

フォーマット:
学位論文
責任表示:
藤本, 宗一
言語:
日本語
出版情報:
藤本宗一
著者名:
藤本, 宗一  
バージョン:
ETD
概要:
ここでの文脈では、生産者とおなじように消費者についても「1999 年の卸売市場法改正」の影響について定量的に検証すべきである。この場合、消費者に注目すべきで、それは都市生活者を意味する。したがって、経済的な観点からは、一定量の流通規模がつねに必要となる。今日的な日本の漁業組織は、95%を占める家族規模的な経営体と約5%の中小規模漁業会社からなつている。しかし、都市の需要を満たすような水産物の総計の約70%は、後者から得られている。これらのことから判断して、この論文では「中小規 模漁業会社が生鮮水産物の中心的な供給者として重要な役割を果し、おなじように都市居住者が生鮮水産物の主要な需要者としての役割を果す」という基本的な視点に立っている。卸売市場の基本的な機能は小売店のための仕入れ機会提供だけでなく、生産者への販売機会提供にもある。公的機関による生鮮食品流通の起源は、供給予測の不可能性と商品の腐敗特性に起因している。果物や野菜などの農産物を取ってみると、計画的な栽培が可能で、卸売市場は消費者の側(都市地域)だけに存在する。一方、水産物が同様に関係する卸売市場では、消費者の側だけではなく生産者の側(水揚される地区)にとっても必要となり、これを「二段階制度流通」と呼ぶことにする。水産物の場合、気象条件におおきく影響され、日ごとの漁獲成果も異なるというのが主な理由で、結果的に漁業供給の内容を予測することが非常に難しい。そのために、供給不規則状態にある生産者の側の卸売市場の調整機能にも注目しなければならない。すなわち、この機能とは、供給状況に連動しながら展開される用途に応じた水産物の分配のことである。一方の消費者の側にある卸売市場は、都市居住者への生鮮水産物の安定供給を機能とするべきである。それは、卸売人を2 社で競争させる複占状態で得られると考えられてきた。なぜなら、生産者の側から荷物を集めるのは卸売人の役目だからである。この競争ルールのひとつが、出荷者を平等に扱うための販売委託による集荷であり、他のひとつが公開されたセリによる取引である。消費者の側にある卸売市場は、生産物の効率的な現金化と生鮮水産品の安定的な供給という意味で責任は重い。しかし、1999 年の法改正で、取引の原則としていたルールに関する一部が規制緩和された。それは、セリによる取引に対しては個別的な相対取引を認め、委託による集荷だけではなく買取による集荷をも容認するというものであった。果たして、この規制緩和は誰にとって有利に作用したのか、その点を精査しなければならない。なぜならば、この改正を突き動かしたのは大規模小売店の功利的な企業戦略であるかもしれないからである。消費者にとって、公開されたセリ取引でない個別的な相対取引の商品が、品質審査を厳格に受けているとは考えられない。消費者は食物獲得を小売店に依存しているのが現実である。だからこそ、生産と消費を結ぶ流通は、消費者に対して商品の品質に責任を持たなければならない。さらに、買取による集荷は、生産者の側の特定の業者からの収集となる。したがって、生産者の側の卸売市場での価格競争を不活発にするから、結果的に生産者は不利益を受ける。わが国の中小規模漁業会社は魚価安を嘆き、消費者は魚価高を嘆いている。この論文に示された理論的な枠組は、いくつかの重要な政策的含意について詳細に示唆することができると考えている。 続きを見る
URL:
http://id.nii.ac.jp/1077/00000224/

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